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6月15日「植林イベント」

GXSNのメンバーは、なぜ持続可能な東京大学を目指して活動しているのでしょうか?何に突き動かされて、何をしようとしているのでしょうか?


「GXSNの声」では、メンバーにインタビューを行い、一人一人の思いに迫ります。

※本記事はあくまで個人の思いや意見に基づいており、大学としての見解ではないことにご留意ください。豊かな言論空間を守るため、ご理解をお願いいたします。


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6月15日、「植林イベント」が開催されました。主催者はどんな思いでこのイベントを企画したのでしょうか?その背景に迫ります。



水野さん、今回のSustainability Weekの一環で植林イベントを企画されたそうですが、どんな内容だったのでしょうか?


——はい、今回は私たちの団体として初めてキャンパス外での活動でした。朝早くに東京駅に集合して千葉県の山武市に移動し、午前中はみんなで暑い中で植林を行いました。植林といっても記念に一本だけ植えるというようなものではなく、みんなで汗を流しながら穴を掘って手で植林をするという、割とハードめなものです。トータルで約400本も植えました。午後はまたバスに乗って移動し、みんなで千葉県産の食事をいただいたり、薪割りをしたりしました。ちなみに今回のイベントはエコグリーングループのご協力で実現しました。



聞いているだけで楽しそうですね。開催した感触はどうでしたか?


——参加者の皆さんからは暑いので大変だったという声は多数寄せられましたが(笑)、なかなか都心にいるとあんなふうに汗を流して屋外で活動することもないですし、大変さを感じてもらうことも一つの目的だったので、その点は大成功だったなと感じています。また、大変だからこそみんなで協力して活動することにもなり、仲良くもなれたと思います。学生だけではなく社会人の方も多数参加してくださり、年齢もバラバラだったので、また新たなつながりが生まれそうな空間になったのも良かった点だと思っています。ただ、企業の皆さんの熱意や思い、問題意識などをもっと伝えられるように工夫することはできただろうなと思っていて、そこは個人的には反省点です。



なるほど。ここから本題なのですが、水野さんが植林イベントをやろうと思ったきっかけを教えてください。


——GXSNにはキャンパス外のフィールドで活動して色々な現状を知るという活動が少ないと以前からずっと思っていました。また、再生可能エネルギーに関しても「生産」の場を見ることもなく議論していたら机上の空論になりそうだということも感じていました。

そんな中で、環境問題や再生可能エネルギーの難しさ、地域の課題や林業の問題も受け止めながら、それでも前を見据えて活動されているエコグリーンの方々と出会い、彼らの活動を通して見えてくる学びの多さから、是非植林イベントをフィールドで色々なことを考えてもらう野外イベントとして企画したいと思いました。



今回のイベントの最大の狙いは何ですか?


——そうですね、もちろん人工林の課題や、危険性それ自体についても知って欲しかったですが、それと同じぐらい、林業の大変さに全く見合っていない儲けの少なさや、自分たちが普段使っているエネルギーはとても大きく、今回の植林では賄いきれないことを、「自分の身体の体感とともに」感じて欲しかったです。そして何より、そんなに大変で、厄介で、不安定なことを、今日も誰かが担ってくれているのだということや、そんな難しくて苦労が絶えないような事業に、リスクを取った上で前を見据えて取り組んでいる方々がいるのだということを感じて欲しかったです。私たちは気を抜くと、現場で働いている方々や地元で生活している方々のことを忘れて、「数字」や「機能」だけの面からエネルギーや環境問題のことを考えてしまいそうになります。でも、当たり前ですが私たちが使っている目の前のあらゆるものは全てどこかに生産地があり、そこにはそこにしかない風景や、そこで働いている方々の生活があります。人や風景も見えなくなっているようでは、自然や環境も見えなくなって当然だと思います。こんな風に色々なことが見えなくなってしまっていることが、環境問題の本質的なことなのではないかと個人的には考えています。だからこそ、現場に行って色々なものを見るということが大切だと思っています。



その他に知って欲しかったことなどはありますか?


——やはり人工林の問題については喫緊の問題として知って欲しかったです。私は以前から森林に関する色々なプログラムに参加していて、森林に関する問題や林業の難しさも、お世話になった皆さんからたくさん教えていただいていました。しかしエコグリーンさんに出会ってから、スギ人工林を取り巻く問題が、私の想像していた以上に切迫していること、そして課題を抱えた森林は都市の近くにもあって、多くの人々の生活に影響することを実感しました。今回木を植えた山武市は、植えられているスギのほとんどが溝腐れ病という病気になってしまっていて、場所によっては目も当てられないほど荒れてしまっています。病気になってしまっている木なので、台風で簡単に倒れてしまいます。その結果、電線を切ってしまったり、家を壊してしまったりという災害につながってしまったりもします。実際に令和元年の台風15号では倒木被害が発生していて、千葉県内で1300ヶ所以上の電線・電柱の破壊が発生しています。私は大学のプログラムなどで色々な場所に行っているのですが、千葉県以外でも、今にも倒れそうな、というかもうほとんど倒れている人工林は本当によく見ます。緊急性のある問題なんだなということを実感としてさらに強く感じています。



水野さんがGXSNで次にやりたいことはありますか?


——私は生産や自然と、私たちの生活との間にあるつながりを見える化するような活動がしたいです。なんというか、自分の生活においてしていることが、自然とどのような相互作用をもっているのかを「見える化」したいという感じです。

具体的には、Nature Positive University というプロジェクトの方で行っている、食堂のメニューのフットプリントを計算するという活動がその一助になるのではないかと期待しています。詳しくはNature Positive University のページに記載しているので、そちらも是非ご覧いただきたいです。



フットプリント計算がつながりを見える化するとは?


——フットプリントは、一般的に、ある物を作る際の環境負荷 (温室効果ガス排出量、水資源の消費など)を数字にまとめたものです。一般的には、「製品Aと製品Bのどちらが環境に良いのか」などを判断するための指標として使われますが、私はもっと別の意義もあると思っています。それは、ある物の環境負荷を計算することは、サプライチェーンをさかのぼって考えることにつながるのではないかということです。たとえば、目の前に二つのりんごジュースがあったとします。一つ目のりんごジュースは何からできているのかよく分からない物質がたくさん入っていて、りんごがどこ産なのかも分かりません。この時、よく分からない名前の物質にも原材料があるはずですが、それがどこでどんなふうに育てられてきたものなのか、どれくらいの距離を移動してきたものなのかなどを想像するのは難しいです。一方で、もう一つりんごジュースは100パーセント青森県産のりんごでできていて、原材料にもりんごのみが使われているとします。この時、私たちはこのりんごジュースができるまでにどんな物語があったのか、ある程度想像することができます。そうすると、そのりんごが育てられてきた果樹園や、農家さんが頭に浮かんできて、私たちがこのりんごジュースに払ったお金が彼らに流れていることも実感として出てくると思います。しかし、現在は、サプライチェーンが複雑化していて、一つの商品に様々なステークホルダーが関わっていることが多いです。そんな中では、仮に全ての原材料の産地が分かったとしても、それを元にりんごジュースの物語を想像することは難しいと思います。例えば、先ほど言っていたりんごジュースに入っているよく分からない名前の物質の産地は、30パーセントが〇〇で、20パーセントは〇〇で、50パーセントは〇〇という複雑なものかもしれません。そんな中、フットプリントは、この商品がどのような物語を持っているのかを一つの数字にまとめて示してくれます。フットプリントの表示をすることで、複雑で理解し得ないような商品の物語を、ある程度想像することができるようにしてくれるのではないかと思っています。とはいえ、フットプリントは、本来曖昧で数値化しづらいような要素も、割り切って一つの数字として表してしまうという性質がありますし、一度数字として出されてしまうと、そこにあった不確実性や多様な文脈は不可視化されてしまい、その数字が揺るぎないものであるかのような印象を持たせてしまうというリスクもあります。そのため、個人個人がどの食材がどのように作られているのかなどを知る力を持つことができれば、それが一番だとも思っています。



最後に一言!


——繰り返しになりますが、私たちは生活している以上、自然と完全に切り離されて生きていくことはできません。自分の目の前にあるものがどこから来たのかということも、忙しい中で生きていれば考えなくなってしまいます。そのことがモノやエネルギーを過剰に消費したり、生産地や廃棄などの現場で働く方々にたくさんのことを押し付けたり、ということにつながっているのではないでしょうか。今回のイベントがそうした「つながり」を考える機会になっていたら嬉しいです。


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(執筆:水野那奈子、協力:秋山知也)

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